不安やいらいらに困る時
- 2022年2月20日
- コラム
漢方医学でいうところの気血と並ぶ水の概念を提唱したのは、日本の医師であるというのは、
ある講習会で聞きました。
金魚鉢の金魚が病気になったとき、
漢方薬を水槽のなかにぱらぱらと入れてみたら金魚の病気が治った
というエピソードが、思いつくきっかけになったということでした。
漢方薬は人だけに効くのではなく他の種の生物にも効果がある
というのであれば実際に生命に対して大いに作用しているということになります。
一例の症例報告と同じですが・・・
抑うつ気分がある方には、不安やいらいらを伴うことが多いので、
根本的な気分のアップを図るために、必要であるときは抗うつ薬を処方したうえで、
その抗うつ薬が効いてくるまでに、派生している症状である不安やいらいら、不眠など
とても辛い症状に対して薬剤を処方することがあります。
その際、通常の抗不安薬や睡眠薬では効きすぎる場合や
飲み合わせが他の薬と良くないといった場合、漢方薬を用いることがあります。
多くの処方がありますが、よく使われる代表的なものとしては
柴胡加竜骨牡蛎湯ではないかなと思います。
処方構成は、柴胡(サイコ)2.5g、半夏(ハンゲ)2g、桂皮(ケイヒ)1.5g、
茯苓(ブクリョウ)1.5g、黄芩(オウゴン)1.25g、大棗(タイソウ)1.25g、
人参(ニンジン)1.25g、牡蛎(ボレイ)1.25g、竜骨(リュウコツ)1.25g、
生姜(ショウキョウ)0.5gです。
肝気鬱結という中医学の概念がありますが、ストレスのため疎肝作用が低下し、
肝の気が滞ります。そうすると、熱を帯び、その熱が近くの胃にうつり
気滞や水滞が生じます。心下痞(しんかひ)はそのようにして生じることがあります。
腹診で胃の部分である心窩部に触れると硬かったり、
嘔気が生じることがありますが、その状態を心下痞と呼びます。
その場合、柴胡加竜骨牡蠣湯が奏功することが多いのです。
処方構成からは、疎肝作用を助け、熱を覚まし、余分な水を履かせて胃を助け、
尚且冷ました気を下方へ沈めて落ち着かせる、といったところでしょうか。
大きな役割は、竜骨牡蛎かと思います。どちらも固くて重いもので、特に牡蛎は海のものです。
不安やイライラは、気が落ち着いていないので、それを冷やして錘をつけて沈める…
以前にそういう効き方をするのだと教えてもらいました。
確かに、クライアントに感想や飲み心地を聞かせて頂いたとき、
これが一番効きますね、落ち着きます、という声が比較的多いと思います。
何千年も前の人の観察眼が現代にも生かされ、この処方は生き残ってきました。
使い方で気を付けたいのは、黄芩が含まれていますから、
肝酵素の上昇がある時、使用後に上昇した時には、控える必要があるということです。
血液検査も大事ですね。